医療広告ガイドラインにおける「歯科」の扱いについて

2018年6月に厚生労働省により改正・適用された「医療広告ガイドライン」。その後、美容医療サービスに関する情報提供を契機として、消費者トラブルが発生しているこ
と等を踏まえ、平成 29 年の通常国会で医療に関する広告規制の見直しを含む医療法等改正法が成立し、平成 30 年 6 月1日に施行されました。
今般の医療法改正により、広告規制の対象範囲が単なる「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変更され、ウェブサイトによる情報提供も規制の対象となりました。ただし、医療を受けるものによる適切な医療の選択が阻害されるおそれが少ない場合には、広告可能事項の限定を解除できることとしています。
医療広告ガイドラインでは、医療広告において表現内容に詳細な規制をもたせています。
違反をすると罰則をうけることもありますので、早急にホームページの内容を見直す必要がありますのでしっかりと勉強しておきましょう。
参照:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
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2023年10月追記
令和5年 10 月 12 日より医療広告ガイドラインに一部改訂が行われました。
1 改正の内容
日本歯科専門医機構が認定する基本的な診療領域に係る歯科医師の専門性資格として
「補綴歯科専門医」を広告可能とする。2 施行期日
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001155410.pdf
令和5年 10 月 12 日
補綴(ほてつ)歯科専門医とは、失った部分を人工歯で修復することで、詰め物、被せ物、インプラント、セラミック治療などの総称となります。 日本補綴歯科学会専門医は、これらの治療を専門とする歯科医師のことをいいます。
医療広告ガイドラインはなぜ改正された?
大きな理由のひとつに、「美容医療においての消費者トラブル」が挙げられます。
美容外科などのホームページにおいて、治療内容や治療効果・料金・口コミなどを掲載。
その表記を見て受診を決めた患者が実際に治療を受けた結果、表記されていた内容と異なることが多くありました。患者にとっては「騙された」と感じるため、トラブルとなったのです。
厚生労働省はこの事実を受け止め、規制を強化。広告の範囲をホームページなどのwebサイトまで拡大しました。
人の健康や人生に関わる情報では、正確さと慎重さが非常に重要です。 医療広告ガイドラインでは、情報を発信する側に規制をもたせ、患者にとって有益な情報のみが発信されるようにしたのです。
こうして歯科医療のホームページも広告の対象になり、表記できる内容は厳しく規制されています。
改正後に禁止された表現
広告では表現に規制をもたせており、主に以下のような表現が禁止されています。
(ⅰ) 比較優良広告
(ⅱ) 誇大広告
(ⅲ) 公序良俗に反する内容の広告
(ⅳ) 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
(ⅴ) 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の 写真等の広告引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
また、広告に該当するかどうかは、患者を誘引する目的があるかどうかがポイントです。
媒体によって判断されるのではなく、たとえばwebページにおいても広告と判断されるものとそうでないものがあります。
誘引性ありと判断されるwebサイト
医療機関側が患者の来院を促す目的があるwebページなどには、「誘引性」があります 。
例として、医療機関の公式サイト、医療機関が制作・運営する情報サイトなどが挙げられます。
誘引性なしと判断されるwebサイト
新聞記事などで新聞社がある医療機関をとりあげて紹介したとしても、医療機関か らの働きかけがなければ「誘引性」はありません。
例として、不特定多数の医療機関の情報を扱うサイトや口コミサイト、自分のブログやSNSなどが挙げられます。
比較優良広告はNG
他の歯科医院と比べて自院の優位性を表現することはできません。
たとえば、 「日本一」「No.1」「最高」などの最上級を表す表記は“たとえ客観的事実であったとしても”禁止されています。
明らかに誤認を招くような最上級について表現することはできませんが、他院と比較する場合には 調査結果などの引用の出典・調査の実施主体・調査の範囲・実施時期などの根拠を示し、客観的な実証が必要です。
また、 「著名人も通院する歯科医院」などの自院の優位性を主張する表現も比較優良広告として扱われ、禁止されています。
誇大広告はNG
より良い印象をつけようとして、事実を誇張する表現は禁止されています。 広告を見た患者が抱く「印象」や「期待感」に対し、実際の内容が異なる場合などは誇大広告として扱われます。
誇大広告にあたるかどうかは常識的な判断で決定され、誤認させた結果やその証明は必要とされません。
つまり、“常識的に考えて、事実よりも良く表現している”と判断されれば誇大広告として規制の対象になります。
治療内容や効果についての口コミや体験談の掲載NG
「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又 は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと」とは、医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することを意味するものであるが、こうした体験談については、個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、 医療に関する広告としては認められないものであること。
引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
医療広告において、治療内容や効果についての口コミや体験談を掲載することはできません。
どんな治療が必要か・またその効果は患者によって異なるはずです。しかし体験談や口コミを読んだユーザーが「自分も同じ結果が得られる」と考え、誤認を招く可能性があります。
たとえばインプラント治療において、患者の骨量や骨の状態によって治療内容や期間は変わってきます。また、ある患者は「腫れなかった」としても、ほかの患者は腫れることもあります。誤認をしたまま受診することで、最悪の場合健康を損ねることもあるのです。
なお、“治療内容や効果は個人によって異なります”などの表記を加えたとしても掲載することはできません。美容や歯科医療において、口コミ掲載をしている公式HPはまだ多くみられますが、早急に改善する必要があります。
院内の雰囲気やスタッフの対応についての口コミはOK?
医療広告ガイドラインでは、治療内容または治療効果に関する体験談や口コミの掲載が禁止されていますが、その他の「院内の雰囲気」や「スタッフの対応」などについては触れられていません。 現段階ではグレーな表現内容だといえそうです。
誤認を招く表現はNG
「痛くない治療」「痛みの少ない治療」など
Q3-22 治療内容について、「歯を削らない痛くない治療(99%以上の満足度)」との表 現は、広告可能でしょうか。(P.6-9,24)
A3-22 「歯を削らない治療」といった表現は、広告可能です。 「痛くない治療」のような科学的根拠がなく虚偽広告や誇大広告のおそれがある 表現は、広告できません。また、「99%の満足度」については、求められれば内容 に係る裏付けとなる合理的な根拠を示し、客観的に実証できる必要があります。引用:医療広告ガイドラインに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf
痛くない、痛みの少ないなどの表現は禁止されています。痛さを感じるかどうかは個人によって異なり、誤認を招く恐れがあるためです。
どんな表現ならOK?
「痛みに配慮した治療」など、患者によって結果や感想が異なることがわかるような表現が望ましいです。
ただし、 「痛みの少ない治療」※患者さんによって異なります
などの表記はわかりにくい表現であり、控えるべきでしょう。
「インプラント歯科」「審美歯科」「矯正センター」など
診療科名として認められていないため、表現できません。
限定解除要件を満たすと表記できるもの
限定解除要件とは
医療広告ガイドラインにおいて、広告できる表現内容は非常に少ないものになっています。
表現が可能なのは
- 診療科目
- 診療日・診療時間
- 入院設備の有無 や病床数
- 医療従事者の氏名・性別・年齢(非常勤である場合はその旨記載)
など。基本的な内容のみで、患者にとっても情報が不足している印象です。そこで、ある要件を満たせば限定的に表現可能な内容を設け、限定解除要件を満たすことで患者がより有益な情報を入手できるようにしたのです。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
まず限定解除の前提として、その広告が「患者自らが求めて入手する情報」であること。患者の意志とは関係なく目に入ってしまうリスティング広告などは条件を満たしません。
歯科医院のホームページは「患者自らが求めて入手する情報」であり、以下の限定解除要件を満たすことで表記できる内容が増えます。
自由診療で記載すべきこと
自由診療は保険診療として実施されるものとは異なり、その内容や費用が医療機関ごとに大きく異なり得るため、その内容を明確化し、料金等に関するトラブルを防止する観点から、当該医療機関で実施している治療等を紹介する場合には、治療等の名称や最低限の治療内容・費用だけを紹介することにより国民や患者を誤認させ不当に誘引すべきではなく、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数を掲載し、国民や患者に対して適切かつ十分な情報を分かりやすく提供すること。
標準的な費用が明確でない場合には、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発 生頻度の高い追加費用を含む。)までの範囲を示すなどして可能な限り分かりやすく示すこと。引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf
自由診療では、医療機関によって治療内容や費用が異なります。そのため、
- 電話番号などの「問い合わせ先」
- 標準的な治療内容
- 標準的な治療費用
- 治療のリスク
- 治療の副作用
をわかりやすく明記することが必要です。
歯科医療広告において、たとえばどんな表記が可能になる?
術前・術後の写真掲載
いわゆるビフォーアフターの写真は、限定解除要件を満たすことによって表記できる内容のひとつです。ただし、掲載する写真を加工・修正することは認められていません。
治療効果について
治療効果は限定解除要件を満たすことで掲載可能になります。ただし、求められれば裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できることが必要です。
認定医・指導医の表記
認定医・指導医の表記は限定解除要件を満たした場合にのみ可能です。ただし、活動実態のある学会でなければいかなる場合でも表記できません。
また、専門医については“厚生労働省が認めた学会の専門医”である場合には、限定解除要件を満たさずに表記が可能です。
インプラント(未承認)の治療内容や効果
インプラントでは、国に承認されたもの・されていないものによって記載すべき内容に違いがあります。
Q3-9 歯科用インプラントによる自由診療については、広告可能でしょうか。(P.26)
A3-9 我が国の医薬品医療機器等法上の医療機器として承認されたインプラントを使用 する治療の場合には、 「自由診療のうち医薬品医療機器等法の承認又は認証を得た医 療機器を用いる検査、手術、その他の治療の方法」に該当し、公的医療保険が適用さ れない旨と治療に掛かる標準的な費用が併記されている場合に限って、広告可能で す(未承認のインプラントを使用する場合はQ2-13を参照)。引用:医療広告ガイドラインに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf
国に承認されたインプラントを使用する治療においては、
- 保険外の治療であること
- 治療にかかる標準的な費用
をあわせて明記したうえで広告可能です。
また、未承認のインプラントを使用した治療の表記については、
- 未承認医薬品等であることの明示
- 入手経路等の明示
- 国内の承認医薬品等の有無の明示
- 諸外国における安全性等に係る情報の明示
も限定解除要件に合わせて記載することが必要です。
わが国の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (以下「医薬品医療機器等法」という。)において、承認等されていない医薬品・ 医療機器、あるいは承認等された効能・効果又は用法・用量が異なる医薬品・医療 機器(以下「未承認医薬品等」という。)を用いた治療について、限定解除の要件 を満たしたと判断される場合には、広告可能です。
引用:医療広告ガイドラインに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf
審美治療
「審美治療」も限定解除要件を満たすことで表記可能です。
Q3-18 歯科診療における「審美治療」は、広告可能でしょうか。(P.24)
A3-18 「審美治療」という表現で行われる医療行為については、様々な治療の方法が含まれ、そのいずれの治療を提供するのかという点が明確ではなく、誤認を与える可 能性があると考えられ、広告できません。
なお、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトなどについては、 広告可能事項の限定解除要件を満たした場合には、広告可能事項の限定を解除可能 です。
また、個々の治療の方法については、例えば、「ホワイトニング」について、医 薬品医療機器等法上の承認を得ている医薬品を使用し、自由診療である旨及び標準 的な費用を記載する場合には、広告可能です引用:医療広告ガイドラインに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf
「審美治療」という表記は治療内容が不明確である点から表記不可とされていますが、限定解除要件を満たすことで表記が可能になります。
歯科医療広告の通報・審査状況
厚生労働省では、医療広告の取り締まりを「ネットパトロール事業者」に民間委託し、監視させる体制をとっています。
また、ネットパトロール事業者は一般人からの通報も受けつけており、通報を受けて審査をする役割も担っています。
医療機関ネットパトロールiryoukoukoku-patroll.com/
厚生労働省が発表した平成29年度のネットパトロール事業の結果報告(2018年3月31日時点)の通報の割合では
- 美容医療 29%
- 歯科医療 27%
- 癌 24%
- その他 20%
となっており、美容や歯科医療での広告において、一般の方からの“広告表記の疑問や不信感”を感じることができます。
更に、平成30年4月~9月分のネットパトロール事業の結果報告(2018年9月30日時点)では
- 美容 21%(238件)
- 歯科 53%(599件)
- 癌 11%(123件)
- その他 15%(177件)
と、改正のきっかけとなった「美容医療」よりも「歯科医療」の広告の審査事案が大きく増加していることがわかります。
通報され審査事案となった広告のすべてが「違反あり」と判断されるわけではありませんが、実際に違反を認められたり、是正に応じずに罰則をうけた事例も出ています。
参考:令和3年度のネットパトロール事業の結果報告
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001036049.pdf
医療広告ガイドラインに違反をするとどうなる?
任意調査にて違反が認められると、自主的な是正を求められます。その後是正に応じない・任意調査に応じない場合は自治体に報告されます。
自治体による行政指導にも応じない場合は、広告の中止命令や是正命令がおこなわれ。告発されることもあります。告発と同時に行政処分を受けることがあり、
- 管理者の変更
- 医療機関の開設許可の取り消し
- 期間を定めて閉鎖を命ずる
などの処分が下されます。
更に罰則については、懲役や罰金といった重い処分を受けることになります。
【6月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金】
- 虚偽広告
- 麻酔科の診療科目を広告する際に、医師の氏名を掲載しなかった場合
【20万円以下の罰金】
- 報告命令に違反した場合
- 立入検査に違反する場合
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この記事を書いた人

- 1,200名以上登録されてるライタープラットフォーム:ライターステーション責任者。2024年より「記事作成代行サービス」や「Hubspot導入支援」、「インタラクティブ動画」など、コンテンツマーケティングに関する支援を開始。
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