医療広告ガイドラインにおける「通報」について

2018年6月に厚生労働省により改正・適用された「医療広告ガイドライン」。医療広告とみなす範囲をホームページなどのwebサイトにまで拡大し、表現方法に詳細な制限を設けました。

この規制により公式サイトなどに掲載できる情報が限られたものになり、違反をしているwebサイトが未だに多くあります。少しぐらい違反していても、バレないだろう…と放置するのは大間違い。

違反は、通報や巡回監視により発見され、罰則を受けることとなります。では具体的に、違反はどのようにして知られることとなるのでしょうか。

違反広告は一般ユーザーから「通報」される

厚生労働省では、医療機関の広告に違反の疑いを感じた場合、一般の方でも「通報」が可能な体制をとっています。

Q4-1 改正医療法により、医療機関のウェブサイトも広告規制の対象となりましたが、 医療広告違反を見つけた場合や医療広告に関する疑問がある場合には、どこに相談すれば良いのでしょうか。(P.32)
A4-1 各医療機関を所管する地方自治体や保健所にご相談ください。問い合わせ窓口一覧を厚生労働省HPに掲載しているため、参考にしてください。

引用:医療広告ガイドラインに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf

一般ユーザーが違反の疑いのある医療広告を見つけた場合、その医療機関のある自治体や保健所に相談できます。

医療に関する広告は、患者や地域住民等に対する客観的で正確な情報伝達の手段となるよう病院等の広告を実施する者に対する相談支援を行うとともに、虚偽・誇大な広告等により、患者等が適切な医療の受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けることのないよう住民からの苦情を受けるための担当係を決めていただき、相談窓口を明確化されたい。

引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001153604.pdf

各自治体で相談窓口を設けるなど、医療広告に疑問をもった患者が相談できるようにしています。また、広告をおこなう医療機関側の相談支援にも応じています。

一般ユーザーからの通報も受け受けられているということは、サイトの違反は常に監視されているということ。
通報を受け、違反が認められた場合には、まずは自主改善を求められます。改善が見られない場合には罰則を受けることもありますので慎重に対応しましょう。

また、ネットパトロールに通報していただくことも可能です。
(http://iryoukoukoku-patroll.com/)

引用:医療広告ガイドラインに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf

さらに、一般の方からの通報において、ネットパトロール事業者に通報することもできます。

「ネットパトロール」による広告違反監視

ネットパトロールとは、医療機関の広告が医療広告ガイドラインなどの規制に違反していないかを巡回して監視するシステムです。

2017年8月より「医療等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」として本格的に開始しました。
厚生労働省が外部委託した民間事業者であり、医療機関のwebサイトの監視や違反審査などをおこなっています。

誰が監視を行うのか

監視をおこなうのは、主にネットパトロール事業者です。厚生労働省はネットパトロールとして「広告などの監視業務」を民間へ委託。また、一般の方からも「通報」を受け付ける2つの方法で医療広告の監視体制をとっています。

ネットパトロール事業者とは

医療機関ネットパトロール

ネットパトロール事業者とは、厚生労働省から外部委託された民間業者です。医療広告であるwebサイトを「キーワード検索」で監視し、規制に違反していないか確認します。
また、監視だけではなく、

  • 不適切な記載のある医療機関などに規制の周知をして自主改善を促す
  • 改善が認められない場合は自治体に報告する
  • 自治体へ報告後の改善状況の調査

など、違反のある医療広告が改善されるまで徹底的に働きかけをします。また、一般の方からの通報についてもネットパトロール事業者で受付をしており、通報された医療広告について違反の疑いがあるかどうかの審査もしています。

事業者におけるウェブサイトの審査から医療機関及び自治体への通知までの流れ

  1. 【監視業務】
    まず、事業者は「キーワード検索」一般の方は「通報」という体制をとり、医療広告を監視します。
  2. 【事業者審査】
    監視した医療広告や通報のあった医療広告に違反がないか審査します。
  3. 【評価委員会へ報告】 
    審査の結果「違反の疑いあり」とされた医療広告を、「評価委員会」に報告し評価をしてもらいます。
    評価委員会は医師や弁護士などの専門家で構成されており、正確な判断が求められます。
  4. 【違反した医療機関への通知】 
    評価委員会によって「明確なガイドライン違反あり」と評価された医療広告をおこなった医療機関に対し、通知をおこないます。
  5. 【改善状況の確認】 
    医療機関に通知をして1ヵ月ほど期間をおき、改善状況を確認します。
  6. 【自治体への報告】
    改善状況を確認した結果、改善が見られない場合は広告をおこなう医療機関がある自治体に報告します。
    報告を受けた自治体は、違反をした医療機関に改善の指導をしなければなりません。
    自治体の指導に従わない場合は是正命令や中止命令がくだされ、「告発」や「行政処分」の対応をとられます。

是正命令や中止命令は誰が対象?

命令に関して、対象者は以下の通り。

  • 個人…違反広告をおこなった個人
  • 病院または診療所…開設者または管理者
  • 広告代理店・新聞社・雑誌社・放送局…代表者

告発については上記に加えて、法人自体または違反広告を主導していた人物を事例に応じて対象とします。

ネットパトロールの結果

参考:令和3年度のネットパトロール事業の結果報告
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000209654.pdf

厚生労働省が発表した令和3年度のネットパトロール事業の結果報告(2022年3月31日時点)では、

  • 医療広告などの審査結果総数 7,378件

でした。この情報は、委託業者である日本消費者協会による集計結果をもとにしています。これは、1つのwebサイトにおいて「医療広告ガイドライン」と「ホームページガイドライン」それぞれの審査を行った場合には2件とカウントしています。

また、1つのwebサイトに複数箇所についての指摘や複数の通報があった場合には1件とカウントしています。

一般の方からの通報は494件。このうち、審査の結果不適切な記載があったwebサイトは74件です。
医療機関数は178機関におよび、一般の方からの通報が活発であることがうかがえます。

フォロワー数が50万人を超える厚生労働省のTwitterでは、毎週金曜日にネットパトロールの連絡先について周知を図っており、医療広告の規制や通報制度を浸透させた結果といえるでしょう。

ネットパトロール事業者のキーワード検索では109件の審査をおこない、86件もの不適切な記載があるwebサイトがありました。

医療機関数は339機関と、公式サイトだけではなく情報サイトなどもしっかり監視していることがうかがえます。

2017年8月に開始したばかりのネットパトロール事業。これから更に活性化していくことが予想され、今後も医療広告の監視体制は厳しくなっていくと考えられます。

医療機関の対応状況

厚生労働省が発表した平成29年度のネットパトロール事業の結果報告(2018年3月31日時点)では、517機関の医療機関が対象となりました。
違反している旨を通知したあとの状況は、

  •  改善を確認           97機関
  •  修整中・修正依頼中       86機関
  •  リスティング広告取りやめ  162機関
  •  未対応            7機関
    (残りの165機関は、今後通知後の状況を確認)

違反通知を受けたほとんどの医療機関が修正などの改善を図っていることがわかります。また、医療広告ガイドラインの限定解除をも満たさないリスティング広告では、取り止めをする医療機関が多いようです。

通報の結果状況

一般の方からの通報に関して、厚生労働省が発表した平成29年度のネットパトロール事業の結果報告(2018年3月31日時点)では、1612件の通報がありました。

そのうち医療広告に該当するものは864件。そのうち同一審査事案を除いたものが569件でした。569件の審査が必要な件数に対して、審査が終了している494件では、 ネットパトロール事業者が“違反の疑いあり”と判断したものが146件。通報を受け審査したうち約3割の医療広告が“違反の疑いあり”と判断されています。

“違反の疑いあり”と判断されたものは評価委員会にて評価をされますが、そのうち

  • 違反あり         74件
  • 違反なし         11件
  • 評価未了(次年度繰り越し)61件

と、評価委員会で評価をしたうちの8割以上が違反ありと判断されています。

一般の方からの通報から約半数が医療広告に該当し、事業者が審査した件数のうち約3割が“違反の疑いあり“と判断。

事業者に”違反の疑いあり“と判断されたうち、約8割以上が評価委員会にて”違反あり“と評価されています。また、通報の割合では

  • 美容医療 29%
  • 歯科医療 27%
  • 癌    24%
  • その他  20%

となっており、美容や歯科医療での広告において、一般の方からの“広告表記の疑問や不信感”を感じることができます。

審査数が多いのは「美容」と「歯科」

さらに注目したいのが、厚生労働省が発表した平成30年4月~9月分のネットパトロール事業の結果報告(2018年9月30日時点)。

平成29年8月~平成30年3月の8か月間の審査対象事案が678件であったのに対して、 その後の平成30年4月~9月分の6か月間では、1137件にまで増加しています。
その内訳は

  • 美容  21%(238件)
  • 歯科  53%(599件)
  • 癌   11%(123件)
  • その他 15%(177件)

と、規制のきっかけとして注目されていた「美容医療」よりも、「歯科医療」の審査事案が大きく増加していることがわかりました。
自由診療の多い歯科医療では、治療内容や効果、「痛くない治療」などの規制される表現を見直すことが強く求められた結果といえます。

今後ますます監視と通報は活性化されていくものと思われますので、早急に対応すべきです。

参考:平成30年度(4月~9月)のネットパトロール事業報告https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000462043.pdf

ネットパトロールの結果報告からわかること

この結果は平成29年度のものに限りますので、今後どのような結果が出るかは予想できません。ですが、この結果から見ると

  • 一般の方の通報は平均して1日4件を超える
  • 一般の方の通報のうち、約半数が医療広告に該当する
  • ネットパトロール事業者が“違反の疑いあり”と判断したものは、医療広告に関する通報に対して3割ほど
  • しかし、事業者が“違反の疑いあり”と判断したもののほとんどが評価委員会でも“違反あり”と評価されている。
    よってネットパトロール事業者の審査には信頼性があるといえる。

以上のことが読みとれます。また、次年度繰り越しの審査を抱えていることからも、監視や通報に対して審査が追いついていないことがうかがえます。

これはネットパトロール事業者にも評価委員会にもあてはまることから、今後も予算の増加や委託する事業者を増やすなど、体制の見直しと強化が予想されます。

違反するとどうなる?

違反の疑いがあると判断されてからの流れを解説します。

任意調査

法又は本指針に違反することが疑われる広告又は違反広告の疑いがある情報物を発見した際 には、通常はまず、任意の調査として、当該広告又は情報物に記載された医業を行う医師等又 は診療所若しくは病院に対して、説明を求める等により必要な調査を行うこと。

引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/shishin.pdf

違反が疑われる場合は、まず任意調査がおこなわれ、広告内容の医療機関やその医師に対して説明を求めます。

調査において、掲載された広告内容の裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できるかどうかが重要です。

そして明らかな違反を確認したら、是正勧告がおこなわれます。必要に応じて広告物の回収や廃止を求めたり、広告作成や掲載に関与した機関や会社にも任意調査をおこないます。

任意調査に応じない・任意での説明や提出された書類に疑問が残る場合 

  • 都道府県知事や保健所のある市長または区長、広告をおこなった者に対して報告命令を下す

あるいは

  •  広告をおこなった者の事務所への立ち入り検査

が行なわれます。

行政指導に従わない場合

広告の中止命令や是正命令がおこなわれます。 また、以下のような場合は告発されます。

① 直接罰の適用される虚偽広告(法第6条の5第1項違反)を行った者が中止若しくは内容 の是正の行政指導に応じない場合
② 法第6条の8第1項による報告命令に対して、報告を怠り、若しくは虚偽の報告をした場 合
③ 同項による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
④ 同条第2項による中止命令若しくは是正命令に従わず、違反広告が是正されない場合
には、刑事訴訟法(昭和 23 年法律第 131 号)第 239 条第2項の規定により、司法警察員に対 して書面により告発を行うことを考慮すべきである。

引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/shishin.pdf

告発された場合、原則として事例を公表され、患者や住民に注意喚起をします。 また罰則に関して、

① の虚偽広告、法第6条の6第4項に違反する場合(麻酔科の診療 科名を広告する際に、併せて許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなかった場合)又は④の 中止命令若しくは是正命令に従わなかった場合には、6月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金 (法第 87 条第1号)、
②の報告命令又は③の立入検査に対する違反の場合には、20 万円以下 の罰金(法第 89 条第2号)が適用される。

引用:医療広告ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/shishin.pdf

【6月以下の懲役又は 30 万円以下の罰金】

虚偽広告 麻酔科の診療科目を広告する際に、医師の氏名を掲載しなかった場合

【20万円以下の罰金】

  • 報告命令に違反した場合
  • 立入検査に違反する場合

以上の罰則が設けられています。 行政処分 悪質な違反広告や、違反をした医療機関が自治体の指導に従わない場合は、告発のほかに「行政処分」がおこなわれます。

  • 管理者の変更
  • 医療機関の開設許可の取り消し
  • 期間を定めて閉鎖を命ずる

などの対応がとられ、医療機関の運営ができなくなってしまいます。

医療広告ガイドラインに違反しないためには?

医療広告ガイドラインに抵触し、評価委員会で“違反あり”と判断されないためには、どうしたらよいのでしょうか?

医療広告ガイドラインを熟知し、規制に沿ったwebサイトをつくること。しかし、これは簡単ではありません。

医療広告ガイドラインでは表現方法や掲載内容に詳細で複雑な制限を設けており、また、今後も規制の見直しによるルールの変更や追加が予想されるからです。

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たとえば既にサイトをお持ちの場合は、医療広告ガイドラインに抵触する箇所がないかくまなくチェック。修正をおこない、レギュレーションの策定もおこないます。

また、新規サイトやページが必要であれば、規制を守りながらもわかりやすく・伝わりやすいサイトづくりが可能。医療広告ガイドラインの見直しがあった場合でも、サイトのリニューアルにも対応していますので安心してお任せください。

この記事を書いた人

ライステ編集部:和賀
ライステ編集部:和賀
1,200名以上登録されてるライタープラットフォーム:ライターステーション責任者。2024年より「記事作成代行サービス」や「Hubspot導入支援」、「インタラクティブ動画」など、コンテンツマーケティングに関する支援を開始。

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